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スペイン巡礼紀行文(2018年5月31日)

 5月31日 Santiago/Negreira 23km 33000歩

 昨日十分休養を取り、さぁ再出発だとリュックを背負った瞬間、重いのに驚いた。こんな重量のものを今までずっと担いでいたとは信じられない。1日休んだだけで、身体が元に戻ってしまうとは。でも、習慣というのは恐ろしい。荷物が軽く感じるようになるまで30分もかからなかったと思う。今までの巡礼時と同じリュックの重さに戻っていた。

 今日から地の果てのいう意味のフィステーラに向かうのだが、逆向きに歩いている巡礼者も少なくない。大西洋に面するフィステーラから出発し、サンティアゴに着き、さらにフランス人の道や北の道を逆向きに歩くようだった。

 今日もガリシア地方特有の霧雨が降り、小鳥がさえずるなかを快適に歩いた。植生でイルンからずっと気になっているのはユーカリの木だ。ユーカリは成長が速いため、紙の原料のチップを得るために豪州から導入されたのだが、必要でなくなった後も増殖し続けて生態系のフローラを破壊している。増殖し過ぎのユーカリを伐採し、山肌が剥き出しになっているところもあった。自然界が美しいとはいっても、目を凝らせばここにも天国の綻びがある。

 今日は残念ながら知り合いに会うことはなかったが、スペイン人、ドイツ人、イタリア人とそれぞれ話をしながら歩いた。
 ドイツ人男性はポルトガル人の道を強く推薦していた。「ポルトガル人は非常にフレンドリーで、かつ物価が安いのが魅力的だった」と言う。ただし、ポルトガル人とスペイン人は仲が良くないため、ポルトガルではスペイン語を話さず、英語を話したほうが良いとアドバイスを受けた。隣国同士で、仲が悪い国は少なくない。お互いに侵略してきた歴史が心のなかで疼いているためであろう。フランスとドイツ、ポーランドとロシア、インドとパキスタン、日本と韓国など例を挙げればきりがない。

 このドイツ人男性は私と同世代で、一度退職したが年金支給まで5年もあり、それをどうやって乗り切るのかが課題だと語った。私と同じ課題を背負っている。働くべきか生き甲斐優先か。

 そのくせ、彼は次はミュンヘンからスイスのアルプスを越えてベニスまでの六百数十kmを歩く計画だと嬉しそうに語る。さらに、歩きたい道のリストはもっとあるとも付け加える。私は四国お遍路を持ち出し、そのリストの最後に加えるよう言った。
 この男性は私と同種の人間なのだと実感した。恐らく一生涯の友達になれるだろう。背丈も雰囲気も同じようなものであるのも親近感が増した。

 サンティアゴ巡礼は観光地化が急速に進展しているが、元来のカミーノ巡礼の雰囲気を知るためには、ブラジル人作家のパウロ・コエーリョの書いた『星の巡礼』は参考になる。
 著者は実体験を元に書いたと主張しているが、万能の剣を探すためにフランス人の道を歩く旅にでる。途中で、数奇な経験をしながらの厳しい旅となる。結局、宝物は発見できないが、彼は人生にとって大切なものを発見するのだ。カミーノに興味のある人ならば、読んだほうが良い名著の一つと思う。
 ただし、主人公は大きい黒いイヌに襲われ、生死の際を彷徨うはめになるが、私はその場面が忘れられず、イヌに吠えられる度にドギマギしてしまうのは困ったものである。ただし、今日は1度も吠えられなかった。  ガリシアは人もイヌも優しいのだろうか。