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スペイン巡礼紀行文(2018年5月28日)

5月28日 Arzua/Lavacolla 30km 43000歩

 昨夜のアルベルゲは1年前にオープンしたばかりのところで、新しくかつオスピタレーロも親切で、非常に満足した。じつはこのアルベルゲはマルタのロバートが真っ先に決めたところなのだが、私は「他のアルベルゲにも当たってみて決める」と言って、町中歩き回ったのだが、結局このアルベルゲが一番良いとして戻って来たのだった。ロバートは満足そうに、「最初から俺が言うとおりにすればいいのだ」と言っていた。

 同室のフロリダから来たという年配の夫婦は上品で、笑顔が素敵で非常に感じのよいカップルだった。歳をとるならこのような夫婦になりたいものだと思った。

 夕食はオスピタレーロに紹介してもらったレストランに1人で行ったのだが、すぐに入って来た巡礼仲間のドイツ人2人とベルギー人1人の4人で一緒に摂った。1人のドイツ人が「今日は絵を描いたか」と私に聞くので、新しい作品を披露すると、もう1人のドイツ人が私に画用紙とボールペンを要求して10分足らずの間にスラスラとガリシア地方特有の建物の絵を描いてしまった。セミプロのようなタッチだった。私よりも強い線で描かれていて存在感はあるが、私の趣味には合わない作風だった。私ならば建物でも自然の一部であるかのように曲がった線や細い線を使って描くのが好きだ。

 食事をしながら、私が「サンティアゴでは5つ星のホテルのパラドールに泊まる」と言うと、ドイツ人が「巡礼者のような嫌な臭いのする者は守衛に追い出されるので、新しい服と靴を買わないといけない」と真顔の振りをして言う。そうかと思うと、今度は「お前は日本の億万長者だ」などと嫌味なことを付け加える。
 私にしてみれば、カミーノの世界を理解するには、5ユーロのアルベルゲに泊まることも必要だが、5つ星ホテルで寛ぐこともあってもいいと思っている。様々な視点から見ないと、カミーノの全体像が見渡せないと思っている。おカネの問題ではなく、心構えの問題なのだと思う。ケチケチしていては、いつまでたっても世界の広さが実感できない。富裕層のホテル生活が楽しいとは限らない。

 そうこうするうちに、同じレストランに集団の客がやってきたのだか、日本人だった。城壁が世界遺産に登録されている町のルーゴから歩き始めたという。サンティアゴまで100kmを超えるので、巡礼証明書が発行されるのだ。彼ら旅行者のほとんどは中高年だが、半数以上は女性だ。どこでも女性は元気で美しい。日本人男性にはもっと海外に飛び立ってもらいたいのだが、やはり日本国内のほうが心地よいのだろうか。殻に籠るのではなく、好奇心を発揮して欲しい。

 すでに帰国したオランダ人のボスが言っていたことを思い出した。彼は「韓国人は英語もスペイン語もほとんどしゃべれなくてもカミーノに大勢やってくる理由が分からない。おそらく何回もトラブルに苦しめられているはずだ」と言っていた。私もそれをうすうす感じていた。若者であれば語学ができなくても好奇心の勢いでカミーノにやってくるかもしれないが、中高年でも話せない韓国人は少なくない。日本人とはバイタリティーや精神構造がずいぶん違っているのだろうか。ただ、言葉が出来なくて、どうやって友達を作るのだろうか。カミーノの神様の助けはそこまで及んでいるのだろうか。

 今日から2日間はフランス人の道をサンティアゴまで歩くことになる。北の道と違って、フランス人の道を歩いている巡礼者は、カラフルでお洒落に見える。
 残り40kmとなったためか、みんな笑顔で、しかも足取りが軽い。思いはみんな同じだ。途中で、スペイン人の年配の女性2人組に会った。2日前に道を間違えて想定外の32kmを歩くはめになった時、お互いに愚痴をこぼした仲間である。記念にと写真を撮らせてもらった。

 つまらない比較論をする。自分と他の巡礼者の比較だ。

 まず巡礼者の基本である脚力では、日頃鍛えているため私はまったく問題がなかった。多くの巡礼者が何らかの問題を抱えていたのを考えると、誠に幸運だったと思う。

 睡眠力についても、イビキが気にならなかったわけではないが、毎夜2度くらい目が覚めてトイレに行ったが、6から7時間の睡眠は確保できた。昨年のようにアルベルゲが嫌になったことはない。慣れとは恐ろしいものだ。結構ヨーロッパ人はイビキの問題に敏感なことが分かった。

 私の英国力は巡礼者の平均以下だった。ヨーロッパ人には数か国語話せる人がごまんといる。英語の歴史は古ドイツ語の文法をベースとして、現在のオランダやデンマークで話されていたノルド語が大量にもたらされ、さらにフランスから王様を迎えるなどしてフランス語がイギリスに流入してきた。そのため、オランダ人、デンマーク人、スウェーデン人、ドイツ人は英語を母国語のように操る巡礼者が大半だった。やはり英語力は英米に近いほど高く、距離が離れるほど下手になるという法則は生きているようだ。日本人には大きなハンディキャップがあるが、たゆまぬ努力が必要だ。来年はもっとスムーズな会話をやってのけたいものだ。2ランクのレベルアップが必要だろう。

 食事力は体格に比例する。いつも私が一番遅かった。平均以下だ。しかし、アルコールの強さでは負けていなかったように思える。酒力は一応合格だろう。

 明日以降いよいよサンティアゴに到着する。今夜は大聖堂から10km離れた村に宿を取った。明日が待ち遠しい。