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スペイン巡礼紀行文(2018年5月26日)

5月26日 Baamonde/Sobrado 32km 51000歩

 日本にハグの習慣がないため、最初はタイミングなどが分からなく戸惑ったが、慣れてしまえば普段通りにやれるようになる。
 別れる時、久しぶりに会った時、絵などを贈って喜んでもらった時などにするのだが、ハグは体の接触を通じて相手の心をドーンと受け止め、ますます身近な存在に感じるようになる。心の距離を縮め、仲良くなるには効果はてきめんである。ラテン文化の優れた点だと思う。

 日本の文化は肉体的な接触を避ける傾向があるが、ハグの科学的効果を考えると再考する必要があるように思う。例えば、認知症患者や終末期患者に心の安らぎを与える意味は大きい。人間はどんなに強がりを言っている人でもやはり弱く、寂しい存在である。悪戯っ子を落ち着かせるにも、ママが子どもをしっかり抱いて「これ以上ママを困らせないで」と耳元で囁けば大きな変化が起こるのではなかろうか。恋人同士の関係の質的変化も手をつなぐかどうかがポイントであると思う。肉体的接触は時に言葉以上にものをいうのは普遍的真理のように思える。

 昨夜アルベルゲで、熱心に絵を描いていたら、何人かの人がやって来て、親指を立てたり、アーティストだと言ってくれる。

 私は「定年退職後の1年しかやっていないので、まだビギナーで上手くない」と答えるのだが、そんな謙譲な態度でいいかどうか考え込んでしまった。プロも素人も、巧いも下手も、芸術を愛するという点では余り差がないように思えるが、どうだろうか。それにしても、アーティストという言葉には心を動かされた。自分はこれからずっと芸術を愛するアーティストでありたいと願う。

 今は体力があって長距離を歩けるが、30年後には余り歩けなくなるだろう。その時には、スケッチブックを持って世界中の美しい村に行って、絵を描いてみたいものだ。夜には、Barでワインやビールを飲みながら、地元の人と談笑できればどんなに楽しいことだろうか。それまでに、語学力と絵画力をもっと高めたいものだ。

 今日は15kmくらいの距離に抑えるつもりだったが、分岐点で道の選択を間違えてしまい、近道をして明日行く予定の村まで来てしまった。これで、サンティアゴ到着日が予定より1日早まったことになる。

 これはヤコブ様の取り計らいではないかと思っている。サンティアゴの大聖堂で予期もしなかった人に巡り会うのではないか。そのために、私に間違った道の選択をさせた。お蔭で今日もゆっくりできない日になってしまったが。

 長い間会っていない、韓国人カップルのケンとミー、原始の道に挑んだベルギー人男性2人組、いつも周囲を明るくしていたドイツ人女性のサビーア、あるいは巡礼初日のアルベルゲの私の隣の席で朝食を摂っていたリトアニアのビーダ、最後のカミーノになるだろうと言いながら癌と闘っているフランス人のダニエル、昨日最後の別れをしたドイツ人のナンなどが思い浮かぶ。いったい誰と遭遇するのだろうか。心が躍動する。

 結局、今日は32km歩き、修道院のアルベルゲに入り込んだ。歴史的な価値のありそうな場所だ。こんなところに6ユーロで宿泊できるとは、カトリック教会の底力を感じる。
このアルベルゲで、マルタ人男性のロバート背の高いベルギー人とドイツ人男性2人組と久しぶりの再会を果たす。みんな元気そうだ。今夜は一緒に食事する約束をした。
 サンティアゴ到着日まで、残すところ3日となった。当日どのような心の状態になるのだろうか。平常心か、泣いてしまうのか。まだ、心構えはできていない。今夜は最初の前夜祭になるのだろうか。いずれにしても楽しみである。