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スペイン巡礼紀行文(2018年5月25日)

5月25日 Gontan/Baamonde 40km 62000歩

 昨夜、近くのBarで簡単な夕食を済ませてアルベルゲに戻ると、オスピタレーロから呼び止められた。「私が骨董品に関心があるかどうか」聞いてきたのだ。何のことか最初は話が分からなかったが、よく聞いてみると、だんだん内容が分かってきた。
 真ん丸の眼鏡をかけ、学者の雰囲気があり、英語を流暢に話すオスピタレーロは珍しいと思っていたのだが、しだいに点と線が結びついてきたのだった。
 彼は日本の磁器、陶器、絵画、着物、硯、扇などのコレクターで、なんと2000点も所有しているという。いわゆるジャポニカなのだ。日本の芸術品の美しさに惚れ込んでいるようだった。
 パソコンに入力した所有品の写真をクリックしながら、彼はコレクションの説明をしてくれる。私には価値を判断する能力はないが、「これだけの骨董品を集めるのに相当のおカネがかかっただろう」と聞くと、「この着物は10ユーロだった」と言うので唖然となった。彼が言うには、かつて日本の骨董品がフィリピンに大量に流出していたが、スペインがフィリピンを植民地にした際に、それらがスペインにもたらされたのだった。それらの骨董品は今でもスペイン国内のマーケットで取引されているそうだ。もちろん、証明書や保証書がついている訳ではなく、偽物も含まれていることは重々承知しているとのこと。将来売って金儲けをしようという気持ちはなく、芸術品を観賞しているだけで満足だという。江戸時代のひな人形は退色しているためか、厳しい表情をしていた。このようなひな人形を見るのは初めてのことだった。

 彼は写真をクリックしながら、何度も美しい、素晴らしいという言葉を連発した。私もしだいに魅入ってしまった。日本はすごい文化の国なのだ。西洋人とは美意識が違っているのだろう。私は1か月もスペインを旅行し、こちらの建築様式や絵画に慣れてきていただけに、少し異なる視点でコレクションを見ていたのかも知れない。
 私はまるでキツネにつままれたような気分になった。このような経験を遠い異国の地で経験することになろうとは。

 彼は有田焼、九谷焼などの陶磁器に強い興味があるのだが、それらの特徴を私に教えてもらいたかったようだ。知っていれば、教えてられたが、こちらの方面はまったく知見を持っていないので答えようがなかった。来年スペインにやって来るまで、少し勉強しておかなければならない。

 今朝、オランダ人のナンと最後のお別れをした。もちろんハグ付きで。今後の日程を聞くと、彼女はバスを利用して1日早くサンティアゴに着くため、再会は無理のようだった。私に話しかけるとき、いつも笑顔でいたのがよい印象を残してくれたのだが、最初に私に会ったとき、「あなたはフランス人か?」と聞いてきた理由は謎のままになった。不思議なこともあるものだ。

 今日は40km、60000歩を超える距離を歩いたが、ずっと曇り空で気温も上がらず、かつアップダウンが少なかったため、予想に反して楽だった。

 道中、会った巡礼者は途中の町から歩き初めたというドイツ人女性のみだった。彼女は昨年病気になったが治りその恢復祝いを兼ねて、ヒホンから1人でゆったり歩いているようだった。1日20km以上は歩かないようだ。
 彼女はアルベルゲでは他人のイビキで眠れないため、もっぱら28ユーロ以下のオスタルなどの宿に泊まっているという。友達を作って同室をシェアすることもしないという。

 彼女のリュックの荷物が多いので「テントを張るときもあるのか」と聞くと、「2kgの化粧品を持ち歩いている」と言う。見栄えを気にしているようだ。「ゆっくり歩きながら、自然界の声に耳を傾けたり、全身で感じたりするのが何よりの楽しみだ」と女性は語る。
 話をしながら分かったのだが、彼女は神経質とは言わないまでも、非常に感受性の豊かな女性なのだ。会話の相手に対する細やかな心遣いは心地がよい。
 体育会系のウォーカーが多いカミーノで、珍しい存在だと思った。時間がかかってもいいから、無事にサンティアゴまで行き着いて欲しいものだ。