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スペイン巡礼紀行文(2018年5月24日)

5月24日 Lourenza/Gontan 24km 39000歩

 昨夜のアルベルゲには日本人親子連れも泊まっていた。北の道で日本人に会うのは初めてだった。日本語を話すのは4週間ぶりのことになる。
 父親は私と同じ歳で、60歳の定年退職後、再雇用を求めず、「好きなことをして残された時間を楽しんで生きたい」と言っていた。同僚にはなぜとずいぶん言われたが、信念を貫き通したようだった。

 自分は何がしたいかが分かっている者は幸せである。それが分からない中高年男性が日本にじつに多いことか。カミーノの巡礼者たちはみんなそれが明確であり、似ていることがすぐに心を開ける仲間になれる理由なのだろう。

「人間いつ死ぬか分からない。会社にしがみついて無駄な時間を過ごしたくない」とも日本人男性は語っていた。自由を大切にし、常に想像的でありたい。そうすれば、どこにでも行けるし、何でも楽しめる。

 

 今日は霧のかかるなか、美しい牧草地帯をアップダウンを繰り返しながら歩いた。
58歳の英国人男性に追い付いたので、話をしながら足を進めた。彼は会社のオフィス・ポリティクスに嫌気が指して、早期退職の道を選んだという。今回が3回目のカミーノだそうだ。
 私が次の町にBarがあるかどうか彼に聞くと、早速スマホのアプリを使って調べてくれた。スペイン語のアプリに最新の情報が載っているらしく、グーグルの翻訳機を使って英語に変換しているという。町毎にアルベルゲ、オスタル、Barなどが掲載されていて、価格や設備の状況まで一目で分かるようになっている。便利だ。
 ほとんどの巡礼者はGPSのアプリを見ながら現在地を確認し、道に迷わないようにしている。私はハイテクばかりに頼っていては面白味に欠けるとして、できるだけ黄色い矢印に沿って歩いてきた。だから道に迷うのだが、それでもハプニングが起きるから面白いように思える。私は時代遅れの人間なのだろうか。

 多くの韓国人がカミーノを歩いているが、パリの空港で会った韓国人が見せてくれたアプリは、希望の所用日数に応じて泊まるべき町が表示されるものだった。確かに便利だが、ここまでくると、マシンに操られているようで、本来の巡礼の意味からかけ離れているように思えてならない。
 カミーノは、観光化、ビジネス、ハイテク、エコツーリズムに覆われ、本来の信仰が稀薄になっている。これも時代の流れか。

 英国人男性と別れると、ずっと1人での歩きとなった。村らしき村も通らず、舗装道路をひたすら歩くことになった。
 途中で少し太めの女性2人組に追い付いた。そのうちの1人は見覚えがある。10日くらい前に会った50歳のドイツ人女性だった。体格から察して、数百キロを歩けるとは思えないため、よく覚えていたのだ。

 その時は神経質な病状を浮かべていたが、今日はじつに穏やかな表情だ。どうやら、似たようなスピードで歩き、しかもドイツ語を話すスイス人女性の友達を見つけたためだった。仲良し2人組という雰囲気だ。
 私が「バスに乗ったでしょう?」と聞くと、彼女らは「少しだけね」と言って、屈託のない笑い声をあげた。これも神様の采配なのだろう。ドイツ人女性には巡礼をしなければならない何かの理由があるに違いない。体格にハンディがあるのだから、少しくらいバスに乗ってもカミーノの守護神は赦してくれるだろう。心がけが一番大切なのだ。彼女らと同じアルベルゲに泊まったのだが、私の名前を覚えてくれていて嬉しくなったので、自作の絵ハガキを差し上げた。

 アルベルゲで、四国のお遍路を完歩したことのあるブラジル人女性と遭遇した。60日もかけて歩いたというがなんと昨年秋に決願したというのだから、彼女と私は会わなかったものの同じ空の下で歩いていたことになる。日本は美しい国だという彼女の言葉がいつまでも私の心に響いた。
 明日は最長の40kmの距離が待っている。
 Ultreia. Animo.
「勇気を持って前へ進め。頑張れ」と自分に言い聞かせた。