メルマガ登録
 
2017年11月
« 10月    
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  
twitter
facebook

秘境・五家荘

 九州中央の山地の五家荘は平家落人の里と晩秋の紅葉で有名なのだが、まだ行ったことがなかった。平成合併で五家荘が八代市に組み入れられ、地元の一部になって以来いつかは訪問しないといけないという気持ちばかりが募っていた。今回の帰郷が大きなチャンスになった。

 八代市で5月12~14日開催された九州国際スリーデーマーチの初日の選択の一つは前泊し五家荘の新緑を楽しむウォーキングのため、妻と二人で出かけた。総勢22名の参加があったというが、昨年は熊本地震の影響で定員に達していなかった。北海道や福島などの遠来の客も含めてこれだけの参加者が集まったのは、熊本地震復興のために地元民を元気付けようというためである。ありがたいことである。

 五家荘は渓谷も深く、鬱蒼とした森林に覆われた自然が豊かなところだった。新緑が眩しい。山桜も最後の力を振り絞って咲き誇っていた。標高1000メートルに満たないが、市内とは別世界である。道路は舗装こそしてあるが狭く、対向車とのすれ違いは離合地点まで引き返さないといけない。街を悩ましている黄砂やオキシダントは無縁な世界だ。空気が澄んでいて、爽やかである。思わず笑顔が弾ける。眉間に皺を寄せている人はいない。

 民宿のような旅館の夕食も良かった。マスの刺身、鹿肉のたたき、鹿肉の天ぷら、新鮮なタケノコ、地元の特産の豆腐、山の幸が所狭しと並ぶ。ビールや焼酎を飲みながら初対面でもすぐに古い友人のように打ち解ける。食べきれないくらい料理が次々とやってくる。他愛のない話題も何だか深遠な意味を含んでいるかのように心に響く。受ける側も深い山奥で健康的な鋭敏な感覚になっているからだろう。会話はお風呂の制限時間まで続くが、また会いたいと思わせる人ばかりだ。良い人が集まっているのではなく、秘境の里が人を良くするのだろう。心も浄化してくれているような心地よさを感じる。

 強く印象に残ったのは70歳代の元気の良さだった。歩いていてもバスの中でも会話と笑いが途切れることがない。体だけでなく、心もすこぶる健康な人たちだ。団塊の世代は幸せだったという思いが湧いてくる。自信に満ち、結束が固い。なんでも制御できると思っているし、実際にやり遂げてしまう。

 ウォーキングの終盤、雨が降ってきたが、それでもゴール地点で鑑賞した「せんだんの轟」(滝の意味)は日本滝100選に選ばれているように、見ごたえがあった。高低差は70メートル前後という話だった。

 五家荘には紅葉の季節に再訪したい。カラフルな絨毯のような山奥はふたたび心を癒してくれるに違いない。

(2017年5月13日、寺岡伸章)
12345 (まだ評価されていません)

読み込み中 ... 読み込み中 ...