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邪馬台国は熊本県にあった?

 4月29日、熊本歴史学研究会の主催する講演会に行ってきた。演題は、「邪馬台国九州所在説をめぐる問題」-邪馬台国、肥後中北部・筑後南部説を改めて提言する-で、講師は九大名誉教授丸山雍成(やすなり)教授だった。
 邪馬台国の所在地を巡って九州説と畿内説が論争しているが決着はついていない。畿内説を唱える学者の声が大きいが、真実を多数決で決める訳にはいかない。そもそも邪馬台国論争自体がブームから取り残されているように思える。再びブームに火が付くのだろうか。
 ご存知のように、魏志倭人伝に邪馬台国への行き方が記されている。日本の古代史最大の謎の邪馬台国と卑弥呼の比定を海外の文献に頼らざるを得ないのは日本人としてなんとももどかしい。日本に記述が残されていないのが悔しいし、情けないし、歯がゆい。中国人が日本人を下に見る根本原因がこのようなところに隠されているのではないか。

 魏志倭人伝の記述の中に出てくる伊都国は現在の糸島市にあったのは間違いがなかろうが、それ以降の経路が諸説あるから混乱してくる。脱線するが、糸島市と言えば、2週間前に110キロウォーキング大会に出場してきたばかりで、開会式の挨拶に立った糸島市長も誇らしげに伊都国という言葉を使っていた。糸島半島は玄界灘に突き出した肥沃で風光明媚なところだから、魏から遣わされた使者も荒れる玄界灘を無事に通過し、ここに辿り着いたとき安堵のため息をついたのではなかろうか。
 魏志倭人伝によると、伊都国から百里東南の方向に、奴国(ぬこく)があると記載されている。距離を表す「里」が長里か短里で所在地の場所は大きく異なる。当時の魏では短里が使われていたという学者の説が有力とも聞いたことがある。また、方角については魏使は真夏に来訪しているので日昇の位置が実際の方向とは時計回りで45度ずれているので、それを補正すると「東南」とあるのはじつは「東」と丸山教授は断じている。この発想の真偽はわたしにはよく分からない。ただ、先進国の魏の役人がそのような単純な間違いを犯すのだろうかという違和感はある。

 魏志倭人伝の邪馬台国に至る記述は、伊都国、奴国、不弥国、投馬国、邪馬台国、狗奴国の順になっているが、丸山教授は伊都国以降の国は伊都国から順次に考えるのではなく、伊都国を基点に放射状に考えるべきと言うのだ。伊都国は邪馬台国の対外交渉の門戸であり、事務を管掌する重要な使館が設けられていたであろうと教授は推測する。順次説か放射状説かでその後の所在地がまったく異なってしまうので、この点は説得力のある根拠を示してもらいたいと思う。

 投馬国へは水行二十日、邪馬台国へは水行十日陸行一月と魏志倭人伝に書かれている。それまで里という距離で記述していたのが、水行と陸行に変更されている。これは魏使が実際に訪問したのは伊都国と奴国までであり、それ以降の国々は倭人から聞いた話であるからであろう。
 それにしても、水行二十日や陸行一月は相当遠い距離だ。邪馬台国の比定が困難な理由はここにもある。素直に読むと、水行で八代市(わたしの故郷で現在住んでいる場所だ)に至り、陸行で球磨川に沿って歩き九州山地を突き抜けて宮崎県日向市に至るという学説もある。丸山教授はそのようには解釈しない。国防上の理由から外国の使臣をストレートに近距離で国都に案内することはしていないというのだ。意図的に大きな数字を倭人が述べていたと教授は唱える。安全保障上の理由はよく理解できるが、それを言うならば、出鱈目を教えた可能性もあろう。このようなことが背景にあるため、邪馬台国の所在地を比定することは困難になっている。

 丸山教授はその他遺跡や遺物の発掘成果も併せて総合的に考えると、邪馬台国は肥後北部か筑後地域にあった可能性が高いと断じている。肥後北部と言えば、菊池川流域に当たる。講演当日の熊本日日新聞のトップは菊池流域が「米作り、二千年にわたる大地の記憶」として日本遺産に登録された記事だった。タイミングが良すぎると思わざるを得ない。肥沃な土地であるだけに、古代から生産性の高い地域だったのに違いない。日本遺産登録と邪馬台国の点をつなぐ線を誰かが解明してくれないものだろうか。興味が強まってくる。

 正直言って、丸山教授の学説でもって邪馬台国論争が決着したとは考えられない。本人も十分自覚されている。邪馬台国の比定に必要なことは、王宮、城址、王墓の発見である。これなくして、論争は決着しない。これは相当困難かも知れない。当分の間、古代史ファンは邪馬台国と卑弥呼の夢を描く楽しみが味わえそうだ。

(2017年4月30日、寺岡伸章)
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