メルマガ登録
 
2018年8月
« 7月    
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
twitter
facebook

二つの選択

 Anthropoceneという言葉を知っていますか。人新世や人類世と訳されているもので、人間が生態系や気候に影響を及ぼすようになった地質的な時代のことのようです。ドイツ人のノーベル化学賞学者のパウル・クルッツェンの造語なのだが、その期間の定義もおろか、学術的な意義も含めて議論は収斂していないようです。地質学的には最後の氷期が終わる1万年前から現在までをHolecene完新世と呼んでいるのですが、Anthropoceneを地質学的歴史の中で定義できないという異論もあります。また、定義するとしてもAnthropoceneはHoleceneと同じ期間という意見や1610年以降、いや産業革命以降にするなどのアイデアがあるようです。

 生物進化における人類の出現は特別なことです。大気中の二酸化炭素の濃度一つとっても、産業革命以降は短期間で急激に増加しています。こんなことは火山の大爆発を除くと地球の歴史に前例がありません。化石燃料は人間が快適さのために大量消費したため、あと半分しか(半分も?)残っていません。このまま進むと人類は危機的な状況に陥るのではないかと警告を鳴らす賢人は大勢います。
 日本の戦後史は自虐史観と唱える保守派の政治家の指摘を待つまでもなく、人間の近代史もまた反省ばかりの人類文明史のように見えます。知性的で良心的な人々は内省的であり、後悔を好む傾向があるのかもしれませんね。絶滅した生物種のように失われたものに愛着を感じ、美しい地球を守ろというのは、思いやりに溢れた心のなせることです。人間らしい優しい心の発露だと思います。

 最近、東京オリンピック組織委員会は金銀銅のメダルを、使用済み携帯電話や小型家電からリサイクルして作ると発表しました。リサイクルの方がまだコストはかかるのですが、循環型社会を作る上でオリンピックを国民覚醒のきっかけにしたいようです。経済性は悪いのですが、このようなメッセージは好ましく感じます。人間の優しい心の表れですし、あるリーダーにとっては政治的メッセージに使われることでしょう。

 人間は地球上の隅々まで生息しています。80億人にまで膨れ上がった繁栄・成功した生物種です。毎年3か月も寿命が伸びていますから、人間の生命力は凄いです。地球温暖化が進展し、今世紀末まで平均気温が2~4度まで上昇しても、かなりの人間は生き残れます。繁栄する大都市は高緯度域に移動するかもしれませんが、生き残るためには仕方がありません。今の海岸沿の大都市は水没しまうでしょうが、世界の態勢に影響がありません。
 食料危機が心配と言う人もいますが、地球上には100億人の人口を養う土地があります。万が一、世界第三次大戦が勃発し、世界中の核兵器がすべて使われたとしても、シェルター内で数日過ごせば、放射能濃度は適応できるレベルまで低下します。シェルター内に入れない人々は犠牲になると思いますが、それでも最悪でも人口が10分の1になる程度でしょう。地球の浄化作用や回復力は目を見張るものがあります。人間の影響力が及ばなくなると、瞬く間に文明以前に戻ります。地球の回復力も人間の生命力も驚くべきものです。

 しかし、そうであっても、人間は天使のような思いやりの気持ちを持っているため、テクノロジーの発展と制度設計により、地球破壊を食い止めると同時に人類の繁栄と幸福を願っています。村上春樹のスペインでの演説を待つまでもなく、地球上で安心して生きるために、核技術を放棄できるかどうか試されていくことでしょう。地球や生物進化の強靱性に頼ることなく、優しい心を持ったままで地球と人類の共生を目指すのは素晴らしいことだと思います。それが成功するかどうか分かりませんが、人間の心の進化に委ねようとしています。挑戦したり、努力したり、悩んだりするのが人間の宿命であり、また楽しみなんですね。好きこそものの上手なれです。結構なことです。

 人間の選択には二つの道があります。繁栄を重視し悪魔のように突き進むか、それとも天使のような優しい心を大事にして共存に心を砕いていくか。前者でも後者でも人間は生き延びると思います。ただし、生き延びた後の人間のあり方はずいぶん異なるものになっていることでしょう。
 難関にチャレンジしたあとの人間は大きな智恵が身についているはずです。それは現代人よりももっと優れた存在になっていることでしょう。優れたというのは「神」に近づいたという意味です。それを目指すのは人間の宿命なのかもしれません。

(2017年2月14日、寺岡伸章)
12345 (まだ評価されていません)

読み込み中 ... 読み込み中 ...