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「このご恩は一生忘れません」

 熊本地震発生から1か月が過ぎ、先週末、故郷八代市の実家の震災被害を確認するため帰省した際、宇城市のボランティア活動で少し汗を流してきた。震災復旧支援活動は民家の倒壊したブロック塀の粉砕と運搬、落下した屋根瓦の運搬などだった。1グループ9名での仕事にしては、軽いものだったと思う。暑かったため休息をとりながらの作業だったが、実働1時間以内だった。それでも、終了後、持ち家の被災者から感謝の言葉をかけていただいたときには、ボランティアをやってよかったと心から思った。お金では決して買えない豊かな気持ちになったのだった。
 
 話は前後するが、宇城市ボランティアセンターの最寄り駅の鹿児島本線の松橋(まつばせ)駅に到着して、タクシーに乗り込もうとすると、ボランティアらしき人が「もう少し待つと迎えのバスが来ますよ」と声をかけてきたため、タクシー乗車を止めた。前日にボランティアセンターに電話した際には、迎えのバスのことは何も言っていなかったので、情報がうまくまとめられていないのではないかと思った。

 ボランティアセンターに到着すると、まず受付で住所などを記載し登録する。利き腕と反対の腕に氏名をカタカナで書いたワッペンを張るとボランティアと見なされる。気持ちが引き締まる。次にボランティア保険に加入する。保険の期限は来年3月末までとなっている。保険金は先方の支払いだ。ボランティアのオリエンテーションの説明を聞く。こちらから被災状況を聞かないこと、破損されたモノでも捨てていいですかではなく保管しますかという気遣いの言葉を使うこと、被災者のプライバシーは守ること、写真等をむやみに撮らないことなどの注意事項が印象に残った。

 次のステップはマッチングだ。被災者から寄せられた作業ニーズを係りの人が説明し、それを実行できるボランティアを決めるのだ。ボランティアたちは東京や関西などの県外からやってきた者が多く、パイプ椅子から身を乗り出さんばかりに真剣に聞いている。ボランティアは数名のグループから構成されるが、移動のためには資材を運ぶ軽トラックとボランティを乗せるクルマが不可欠なため、マッチングで最初に聞かれることは、軽トラックでやって来た人はいないかということと、自家用車を出せる人はいないかということだった。これらのボランティアが優先されることになる。

 宇城市での作業ニーズは家屋内の後片付けはなく、屋外のブロック塀や瓦の運搬が主だった。マッチングの説明が終わると、ボランティの手が一斉に上がる。躊躇していると作業が自分に回って来ない。優先的に選ばれるのは前席に座っているボランティアだ。早く到着した者から作業を割り当てられるのだ。
 マッチングが終わると、資材置き場で、作業に必要なハンマー、スコップ、瓦礫袋などを選択して、軽トラックに積み込むのだ。チームのメンバーを確認してクルマで出発することになるが、わたしの場合はボランティアセンターに9時に到着したのだが、被災地への出発は10時になっていた。熊本市などの規模の大きなボランティアセンターでは数時間もかかるという。東京から毎週末、来熊しているというボランティアは早朝4時過ぎにボランティアセンターで並び始めたが、マッチングが終わったのは11時だったと話していたが、当初は段取りも悪くそれほど混乱していたのだろう。

 被害がもっとも深刻な地域の一つである御船(みふね)町はあまり報道されていないためか、ボランティアの数がまったく足りず、支援作業のニーズが常時200件残されているそうだ。家屋内の後片付けが主な仕事であるという。ボランティアの作業時間は午前9時から午後4時までと決められているが、時間内に終わらないことも多いという。
 御船町で作業をしたボランティアによると、被災状況の説明を堰が切れたようにしゃべりだしたり(誰かに話を聞いて欲しいのだ)、地震の恐怖と置かれた悲しい状況から泣き出したり、作業終了後にこのご恩は一生忘れないと非常に感謝されたりしたという。あるボランティアは「自己満足」でやっていると話していたが、それは謙遜のし過ぎだと思う。困っている人を助けるという行為は人間に備わっている美徳の一つである。人類が栄えてきたのはまさに協調の心があったからに他ならない。阪神淡路大震災から始まったボランティア活動ブームは、東日本大震災で大ブレイクし、そこでノウハウを学んだボランティアたちは今熊本に馳せ参じている。ボランティア活動に参加しようとすると交通費や宿泊費などで結構お金もかかるが、自腹を切っても困っている人の役に立ちたいという人々がいるのは心強い。

 日本は震災列島である。地震、台風、豪雪などによる被災はこれからも続くに違いない。自然の脅威を目の前にしてうなだれていては人間の進歩はない。体力のある者、知恵のある者、金銭に余裕のある者は、それぞれの立場で、被災者の支援を行って欲しいと思う。次に被災に合うのは自分の番だ。お互いに力を合わせて自然の猛威に立ち向かうことで、人間は心を一つにして復旧と復興を成し遂げなければならない。それができなければ、その国や地域は没落していく。
 熊本県人の地方創生力が今問われている。2週間後、再びボランティアで熊本に行く予定だ。何も支援しない人をけっして批判したりはしない。まず、自ら行動するしかない。

(2016年5月18日、寺岡伸章)
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