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スペイン巡礼紀行文(2018年5月12日)

5月12日 Llanes/Ribadesella 30km 50000歩

 昨日の夕食は韓国人夫婦のケンとミーがアルベルゲのキッチンで作った食事をお裾分けしてもらった。歓迎させるのは嬉しいが、何の料理も作れない自分が誠に頼りなく思えてきた。どのように対処すればいいかよく分からない。

 数年前のことだが、ある日本人ノーベル賞学者から聞いた話だが、彼がある東欧の国を訪問した際、現地の学者にどうしてもとしつこく誘われて、自宅を訪れたそうだ。案内された場所は狭い台所で、カーテンで仕切った向こう側では子供が勉強していた。ひどく狭い空間の中で奥さんの手料理と温かいおもてなしを受け、非常に感激したという。
 その日本人学者は「日本の学者は自宅が狭いから外国人を招待できないと不満を言うが、本当に狭いのは家ではなく、心ではないのか」と付け加えた。私は「まさにその通りだ」と思ったが、では「自分は外国人を自宅に招待する気構えができているのだろうか」とその時思った。
 しかし、今回の巡礼の旅を通じて、カミーノで知り合った人ならば、自宅に招待できる勇気がついた。仲良くなれば別れる際、彼らから「遊びに来い」と誘ってくれる。自分から心を開くことが大切だ。つまらない見栄なんか張っても仕方がない。そのような気持ちの変化があったのはカミーノのお陰だと思う。

 スペインには、女房の尻に敷かれた男たちが食材を持ち寄って自分たちで料理し、食事を仲間で楽しむ美食家倶楽部がある。そのとき、食事を作らず待っている大の男たちが歌う歌がある。
「俺たちはお腹が減った、減った、減った・・・」と歌う幼稚な歌なのだが、ワインの酔いも手伝って、私はアルベルゲのキッチンでその歌をスペイン語で歌った。
 すると、少し離れたところにいた昼食を一緒に摂ったスペイン人男性がにっこり笑い、親指を上に立てた。「この日本人はこんなことも知っているのか」という顔をしていた。彼との心の距離が一気に縮んだように思われた。

 

 今日も少し冷たい風が吹くなか、海岸線と牧草地帯を交互に快適に歩いた。何度も繰り返すのだが、まるで天国のようだ。
 途中から日差しが強くなってきたので、日焼け防止のため手拭いを頭から被りながら歩いた。すると、他の巡礼者が「僧侶のようだ」と言い、別の巡礼者が写真を撮らせてくれと頼んできた。
 しばらく歩いていると、今度は地元の男性が出てきて、「一緒に写真を撮らせてくれ」と要求してきた。こんな格好をしているのは私だけだが、そんなに珍しいことなのだろうか。何が交流のきっかけになるか分からない。何でもトライしてみる価値はありそうだ。

 巡礼を始めて16日が過ぎたが、出費を計算すると、一日平均4500円くらいしか使っていない。贅沢も、節約もせず、この数字に収まっている。1か月計算でも、14万円に達しない。日本にいて普通の生活をしていてもこの程度の額はかかるのではないか。カミーノは廉価であるが、心優しい人々との交流が楽しめるじつに贅沢な心の旅なのだ。

 巡礼の間で必ず話題となるのがイビキだ。翌朝になると、誰々のイビキがうるさく、ほとんど眠れなかったという苦情は後をたたない。お互いに人間関係を悪くしたくないので、本人の前では言わず、噂をするだけでアルベルゲを離れて、翌日ホテルに逃げ込む巡礼者は少なくない。特に男性に多いように見える。男性は繊細で弱い動物なのだろう。

 なお、オランダ人のロブから聞いた話だが、ある巡礼者のイビキが病気的なほどひどいときがあり、勇気ある巡礼者が状況を率直に本人に話したところ、イビキの男は勇気を持って4日目に巡礼を止めて帰国し、治療に専念したという。
 時にはお互いに勇気を持って相手にアドバイスする必要があるのだろう。まだ、私のイビキの苦情を言う人は今のところいない。そのように見える。ただ、迷惑をかけているかもしれないという気持ちを持っていることが大事だと思っている。