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エッセイ・小説

バレンタインデー

 今年の冬は記憶にないくらい寒い日々になりました。家のリフォームを控え、冷たい隙間風が容赦なく侵入して来たため、毎日ぶるぶる震えていました。案の定、インフルエンザB型に罹患し、一週間寝込んでしまいました。

 でも、今日は暖かい風が吹き、玄関前の梅の老木は一斉に花を咲かせ、眼の包容になっています。そこで一句。
「花が咲く ぼくの心は いつ咲くの」
 まだ風邪から完全に復帰していない心持ちを表現してみました。

 じつは、今度の日曜日は熊本城マラソン大会にエントリーしているのですが、体調が万全ではなく、かつ絶対的な練習不足のため、参加しても完走できるかどうか心配です。一応、明日30キロを走ってみて、最終判断をしてみたいと考えています。場合によっては、来年に再チャレンジということになるかもしれません。

 今日はヨーロッパの山の水彩画を描いてみました。3日間で6時間の所要時間で一枚の作品が出来るのですから、水彩画は手頃な趣味です。小説などと比べたら遥かに気楽ですね。水彩画は上達が「目に見える」のがいいですね。他人になんと言われようと、満足度を実感できるのがいいです。

 それから、ヨーロッパ放浪の旅に備えて、数か国語のヨーロッパ言語を学習していますが、少しずつ聞き取れるようになっているのが嬉しいです。風邪でベッドに入りながらも、ラジオ語学講座を聴いていたのが奏功したのかもしれません。転んでもタダでは起きない。

 そうそう、今日はバレンタインデーです。妻は買い物に出かけてまだ帰って来ていませんが、どんな美味しいチョコを買ってくるのでしょうか。それとも、ケーキかな。首を長くして、楽しみに待つことにしましょう。

(2018年2月14日、寺岡伸章)
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インフルエンザB型

 インフルエンザに罹患し、水曜日は最悪の状態でした。今日金曜日になり、やっと当日のことを書こうという気になっています。
 今週月曜日に妻とともにインフルエンザに罹り、お互いに感染させないよう家庭内別居の状態が続いています。水曜日が病態のピークで、新聞受けに新聞を取りに行くのさえ億劫でした。

 熱が上がったり下ったりを繰り返し、やる気がしないため、寝床に入っているのですが、発想がドンドン後ろ向きになっていきます。病気が回復し元気になったら、あれをやろうこれをやろうという気持ちさえなくなってしまいました。しまいには、このまま肺炎にでもなって死んでしまったらどうなるのだろうかと想像します。
 通夜の席でみんな私のことをどう言うのだろうか。我が儘で厄介な奴だったと私のことを嗤うのではなかろうか。私の財産は妻や子供たちが勝手に使い込んでしまうのではないか。誰も私の遺骸を前に涙を流さないのではないか。これは最悪で、最低のシナリオ。

 こんな嫌なことばかり寝床の中で考えながら、気晴らしにNHKのBS番組を眺めていました。すると発見したのですが、結構面白い番組が多いですね。美しい自然の神秘の画像、ウナギの受精卵を南太平洋で探し出す学者の苦労、会社のボスが自社の現場に侵入するルポ、歴史再発見のような番組、一風変わった海外旅行番組、スポーツ、欲望資本主義の未来などなど見ごたえのある番組に遭遇しました。
 私は生来、外に出かけるのが好きなタイプですが、家に閉じこもってBS番組だけを観ていても飽きないなと思い直しました。

 なお、病気は回復基調です。落ち込んだ時にも救いの手はあるものです。

(2018年1月31日、寺岡伸章)
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『蜘蛛の糸』その二

 或る日の事でございます。御釈迦様は極楽の蓮池の縁を、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。池の中に咲いている蓮の花は、みんな玉のように真っ白で、その真ん中にある金色の蕊からは、何とも云えない好い匂が、絶間なくあたりへ溢れて居ります。極楽は丁度朝なのでございましょう。
 やがて御釈迦様はその池の縁に御佇みになって、水の面を蔽っている蓮の葉の間から、ふと下の容子を御覧になりました。この極楽の蓮池の下は、丁度地獄の底に当って居りますから、水晶のような水を透き徹して、三途の河や針の山の景色が、丁度覗き眼鏡を見るように、はっきりと見えるのでございます。
 するとその地獄の底に、犍陀多と云う男が一人、外の罪人と一緒に蠢いている姿が、御眼に止まりました。この犍陀多と云う男は、人を殺したり家に火をつけたり、いろいろ悪事を働いた大泥坊でございますが、それでもたった一つ、善い事を致した覚えがございます。と申しますのは、或時この男が深い林の中を通りますと、小さな蜘蛛が一匹、路ばたを這って行くのが見えました。そこで犍陀多は早速足を挙げて、踏み殺そうと致しましたが、「いや、いや、これも小さいながら、命あるものに違いない。その命を無暗にとると云う事は、いくら何でも可哀想だ」と、こう急に思い返して、とうとうその蜘蛛を殺さずに助けてやったからでございます。
 御釈迦様は地獄の容子を御覧になりながら、この犍陀多には蜘蛛を助けた事があるのを御思い出しになりました。そうしてそれだけの善い事をした報には、出来るなら、この男を地獄から救い出してやろうと御考えになりました。幸、側を見ますと、翡翠のような色をした蓮の葉の上に、蜘蛛が一匹、美しい銀色の糸をかけて居ります。御釈迦様はその蜘蛛の糸をそっと御手に御取りになって、玉のような白蓮の間から、遥か下にある地獄の底へ、まっすぐにそれを御下しなさいました。
 こちらは地獄の底の血の池で、外の罪人と一緒に、浮いたり沈んだりしていた犍陀多でございます。何しろどちらを見ても、真っ暗で、たまにそのくら暗からぼんやり浮き上がっているものがあると思いますと、それは恐ろしい針の山の針が光るのでございますから、その心細さと云ったらございません。ここへ落ちて来る程の人間は、もうさまざまな地獄の責苦に疲れ果てて、泣声を出す力さえなくなっているのでございましょう。
 所が在時の事でございます。何気なく犍陀多が頭を挙げて、血の池の空を眺めますと、そのひっそりとした暗の中を、遠い遠い天上から、銀色の蜘蛛の糸が、まるで人目にかかるのを恐れるように、一筋細く光りながら、するすると自分の上へ垂れて参るのではございませんか。犍陀多はこれを見ると、思はず手を拍って喜びました。この糸に縋りついて、どこまでも登って行けば、きっと地獄から抜け出して、極楽へ入る事さえ出来ましょう。
 こう思いましたから犍陀多は、早速その蜘蛛の糸を両手でしっかりとつかみながら、一生懸命に上へ上へとたぐり登り始めました。しばらく登る中に、とうとう犍陀多もくたびれて、先一休み休むつもりで、糸の中途にぶら下がりながら、遥か下に眼を遣りました。
 すると、一生懸命に登った甲斐があって、さっきまで自分がいた血の池は、今ではもう暗の底に何時の間にか隠れて居ります。この分で登って行けば、地獄から抜け出せるかもしれません。所がふと気がつきますと、蜘蛛の糸の下の方には、数限もない罪人たちが、自分の登った後をつけて、まるで蟻の行列のように、やはり上へ上へ一心によじ登って来るではございませんか。驚いたのと恐ろしいのとで、暫くは唯、莫迦のように大きな口を開いた儘、眼ばかり動かして居りました。この細い蜘蛛の糸が、どうしてあれだけの人数の重みに堪える事が出来ましょう。もし萬一途中で断れたと致しましたら、肝腎な自分までも、元の地獄へ逆落しに落ちてしまはなければなりません。
 そこで犍陀多は登ってくる外の罪人どもに向かって、「この蜘蛛の糸は己のものだぞ、下りろ、下りろ」と大きな声を出して、喚きそうになりました。でも、ふと思い返してみることにしました。己独りでも断れるかもしれないか細い糸なのですから、大勢の人間がぶら下がっても似たようなものだろう。己独り助かっても仕方がない、切れて落ちるときはその時だと観念しました。そうして犍陀多は「お前たちもよくここまで登って来た。もう少しで責苦の地獄から抜け出して、極楽に辿り着けるかもしれない。助け合って登り続けようではないか」と檄を飛ばしました。すると蜘蛛の糸は瞬く間に鋼の綱に変わってしまうではありませんか。罪人たちは歓声を上げて喜びました。そうやって罪人どもは鋼の綱を手繰ってみな極楽まで登り詰めることが出来ました。
 御釈迦様は極楽の蓮池の縁に立って、この一部始終をじっと見ていらっしゃいました。罪人どもが底抜けに明るい顔をして極楽の地に立つのを待つまでもなく、嬉しそうな御顔をなさりながら、又ぶらぶら御歩きになり始めました。そしてこう呟かれました。「わしの役目は終わりを告げた。これで罪人どもは回心し、いなくなってしまった。もはや地獄は要らなくなったので、閉じることにしよう。現世も極楽のような過ごしやすい所となろう」
 蓮の花の金色の蕊からは、何とも云えない好い匂が、絶間なくあたりへ溢れて居ります。極楽はもう夕暮れ近くになったのでございましょう。

(2018年1月25日、寺岡伸章)
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悪くない一日

 今日は木曜日ですが、昨日のことを思い出しながら書いています。
 まず、いつものように早朝6時30分に起床し、NHKラジオで英語、ドイツ語、スペイン語、フランス語、中国語を学習しました。複数の外国語を同時に勉強すると、頭のなかがこんがらかってしまうため、避けた方がいいという人もいますが、果たしてそうでしょうか。実際にやってみないと分かりません。自分を実験台として実験中です。数か月経てばその結果が分かるかもしれません。楽しみです。

 それから朝食を摂り、午前中は水彩画を描きました。花の咲いているヨーロッパの庭園です。花は人間への偉大な贈り物と思います。模写ですが、予想以上の出来栄えに大変満足しています。こうやって集中して描くと、旅情が沸き起こりますね。またヨーロッパの田舎を歩いてみたくなりました。

 午後は、来月のマラソン大会に備えて30キロ走に挑戦しました。冷たい風の吹くなかでの7回目のトライアルでしたが、徐々にタイムが縮まってきています。目標の5時間切りまでもうひと踏ん張りといったところでしょうか。本番まで4週間を切り、身の引き締まる思いです。

 帰宅して、お風呂に入りゆったりした後、ビールを飲みます。まさに、至福のひと時です。苦労して走ったのですから、楽しいことがないと報われません。
 夕食後、1時間睡眠を取ったら頭が冴えてきました。再び、お花の水彩画を描きます。自分としてはまずまずの仕上がりだったのですが、妻に見せると、「いまいちね。次は頑張って」というつれない返事。

 でも、今日は悪くない一日でした。上出来でないが、少しいい、あるいはそんなに悪くない毎日を送っていきたいものです。
 時間のたっぷりある退職者の身にはこのような生き方がピッタリ合っているのでしょうか。

(2018年1月25日、寺岡伸章)
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平凡な一日

 お元気ですか。わたしも元気です。
 定年退職の身には毎日が日曜日で、曜日の感覚がありません。
 今日は、いつものように早朝からNHKラジオの外国語講座で、英語、ドイツ語、スペイン語、フランス語、中国語の番組を聴きました。海外に旅行に行ったとき、どこまで通じるか楽しみです。
 朝食後、市立図書館に行って、芥川龍之介全集と透明水彩画の本を借りました。ついでに、図書館主催の文学散策ツアーを申し込みました。いつまでも、文化を愛する人でありたいです。
 帰宅すると、すぐに『蜘蛛の糸』に目を通しました。何十年ぶりに読んで大変懐かしく思いました。文章の切れ味はやはり鋭いですね。それから、水彩画の本を参考に、絵を一枚描きました。ヨーロッパの田舎ののどかな風景です。描くば描くほど旅情が募ってきます。今年もスペインの田舎道を歩いてみたくなります。
 妻の作ってくれた美味しい昼食を食べながらビールを飲んでいたら、眠くなりました。昨日走った30キロの疲れがまだ残っていたようです。2時間昼寝したらすっきりしましたので、源氏物語の古文と英訳を並行して読もうとして悪戦苦闘です。土曜日の勉強会の準備ですが、落ちこぼれてしまいそうです。
 午後5時になると、TVで大相撲を観戦しながらまた冷えたビールを飲みます。至福のひと時です。
 こうやって一日が過ぎていきます。わたしは幸福なのでしょうか、それとも苦労症なのでしょうか。
 あなたは今幸せですか? 毎日有意義な時間を過ごしていますか?

(2018年1月17日、寺岡伸章)
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年間スケジュール

 今年1年間やりたいことややるべきことを書き出してみた。
 1月。2月中旬の熊本城マラソン大会に向けた走り込みとして30キロ走8回。新たに水彩画絵と源氏物語の英訳読解に挑戦開始。
 2月。マラソン大会5時間切りの目標。それが終われば、家族で大宰府への1泊旅行。梅の花を観賞し、名門旅館でゆったりしたい。
 3月。初孫が無事出産すれば、初対面のため上京。ついでに、かつての職場の仲間と同窓会をやったり、美術館巡りを楽しみたい。4月からのサンティアゴ巡礼に向けて準備。
 4月。結婚28周年で天草か南阿蘇の旅館でくつろぎたい。下旬にはサンティアゴ巡礼の徒歩1000キロの旅に出かける。
 5月。ずっとスペインを歩いているはずだが、巡礼終了後は芸術の都パリで、美術館巡りだ。
 6月。いよいよ始まるワールドカップサッカー大会でテレビ釘付けになるだろう。
 7月。特段の予定はまだないが、ゴルフ三昧の日々か。
 8月。展覧会に水彩画を出品するために、絵描きに集中。神経を休ませるために、水泳を楽しもう。
 9月。10月の行橋別府100キロウォーク大会に向けて特訓。
 10月。100キロウォーク大会は16時間台が目標だが、果たして達成できるか。20日の地元の花火競技大会は桝席で鑑賞したいものだ。
 11月。妻と奄美大島を歩いて一周したい。250キロくらいあるかな。23日は世界文化遺産に登録されたお祭りを堪能したい。母の7回忌を迎える月でもある。
 12月。今年も年賀状はすべて手書きの水彩画を描き上げたい。
 一年間の予定はこんな感じになった。健康に留意しつつ、スポーツと文化を享受する年にしたい。新しい出会いも大切にしたい。予定外の楽しいことがあれば、さらに素晴らしいだろう。
 あなたにも自分に合った良い1年を過ごしてもらいたい。

(2017年1月4日、寺岡伸章)
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